茗渓会様にて『「言った・言わない」「忘れちゃった?」シニア世代とのトラブルを無くすコツ』をテーマに講演をしました。

千葉県大網白里市議会議員猪崎紀人様が主催する茗渓会で、

「言った・言わない」「忘れちゃった?」シニア世代とのトラブルを無くすコツ

ジェロントロジーで分かる!高齢者心理と配慮のポイント―

というテーマで講演をしました。オンラインでしたが、ご参加の方全員が、実際にお会いしているような、和気あいあいとした雰囲気が醸し出されました。後半の質疑応答・意見交換では時間オーバーとなるほどの盛り上がりとなりました。

講師:﨑山みゆき(一般社団法人日本産業ジェロントロジー協会 代表理事)
開催日:2025年10月15日(水)18:30~20:30

主催:茗渓会


1.講演の趣旨

本講演では、職場や接客の現場で増加する「シニア世代とのコミュニケーションのすれ違い」――
「言った・言わない」「聞いていない」「忘れた」などのトラブルを減らすことを目的としました。マナーとは異なる、 “ジェロントロジー(加齢学)”の視点から取り上げました。高齢者心理を理解し、実践的な配慮方法を、全員で、実技を交えて学びました。


2.講演概要

(1)シニアとの関わりが必要な3つの場面

  1. 職場内での年上部下を持つ管理職:指導・評価の難しさをどう克服するか。
  2. 同僚・チーム内での人間関係:世代ギャップを越えた配慮のポイント。
  3. 高齢者顧客への対応:クレーム防止や満足度向上に直結する「伝え方」「聞き方」の工夫。

これらの場面は業種・企業規模を問わず発生しており、対応の違いが職場満足度や顧客満足度を左右している。


(2)講師自身の取り組みと研究背景

講師の﨑山氏は、企業勤務時代から「なぜ定年間際の社員は急に元気を失うのか?」という問題意識を持ち、解決のため大学院に進み加齢心理やライフデザインを研究。修士取得
2003年に法人を設立し、「産業ジェロントロジー」を提唱。
2015年には企業における活用を目的に「産業ジェロントロジーアドバイザー」資格制度を創設。
これまでに120名以上を養成している。


(3)“シニア理解”が欠ける5つの典型例

  1. 高齢者の実像を正しく理解していない。
  2. 自社ビジネスのどこでシニアと関わるか整理できていない。
  3. 「自分は若いから関係ない」と考えてしまう。
  4. 高齢者対応を「わかったつもり」でいる(介護職にも多い)。
  5. 高齢社会の変化をビジネスチャンスとして認識していない。

実例として、“祖父母マーケット”を紹介し、「顧客は孫ではなく支払い主のシニア」という視点の重要性を説いた。


(4)「高齢者理解クイズ」から見る意識のズレ

参加者と共に行った「高齢者理解クイズ」では、

・モチベーション低下は賃金では解決しない
・認知機能のすべてが低下するわけではない
・企業が高齢者に求めるのは「専門性」より「コミュニケーション力」
といった結果が示され、多くの参加者が新たな気づきを得た。


(5)ジェロントロジーとは何か

「ジェロントロジー(Gerontology)」は、“加齢学”と訳されている。心理・教育・社会・栄養・法律など多分野にまたがる。
その中でも「産業ジェロントロジー」は、加齢による変化を理解し、職場マネジメントや人材活用に活かす実践的学問である。
福祉分野とは異なり、“働くシニアの能力を引き出す” ことを目的とする。


(6)まとめ ― シニアと共に働く時代へ

  • 現代の「シニア」は、かつてより体力的に15年若返っている健康世代。
  • 経験・知識を活かし、柔軟性を磨けば、組織の力を高める存在になり得る。
  • そのためには、加齢特性を理解した上での伝え方・接し方が不可欠。

「マナー研修ではなく、科学的根拠に基づいた“加齢理解”こそが、シニアとの信頼関係を築く第一歩である」と講師は強調した。


3.受講者の主な反応(抜粋)

  • 「思い込みで接していたことに気づいた」
  • 「年上部下との接し方を見直したい」
  • 「お客様対応にすぐ使える内容だった」
  • 「シニアの“やる気の仕組み”が理解できた」

4.まとめ

本講演は、「高齢化=負担」という固定観念を払拭し、
“加齢を科学的に理解し、ビジネスに活かす”という新たな視点を提示した。
産業ジェロントロジーの知見を通して、
誰もが安心して働ける多世代共生の職場づくりへのヒントを得る機会となった。