高齢者の「仕事を覚えるのが遅い」を改善するコツ。

人材不足が好影響に転じ、シニア活躍職場が増え始めました。
総務省「令和5高齢社会白書」によると、2022年の高齢者の就業率は25.5%。
過去最高水準となりました。
この背景には、高年齢者雇用安定法の改正という、企業側の取り組みもありますが、
平均寿命の延びによる経済的自立の必要性、社会参加意欲の高まりなど、高齢者自身の変化が大きいと考えられます。

さて、働く高齢者に対して、相変わらず出てくるのが、以下の言葉。
「高齢者は若い世代よりも仕事の覚えが悪い。何とかしたい。」
特に、今までと違う業種・業態から、新規採用をする場合です。
先日も、ある自治体で事務職のアルバイトを採用したという職員の方が、こんな愚痴をこぼしていました。

「30代の子育てママさんと、企業の早期退職の60代半ばの男性を採用しました。
二人、一緒に仕事を教えています。
ママさんはブランクがあったので、どうかな?と思っていましたが、覚えるのが早いですね。男性は、なかなかで…。仕方ないのですが…。」

Gerontology的視点から見ると、世代が違うのに、同じ教え方をするというのは、間違いです。世代によって、変えなくてはいけません。
では、高齢者の方たちが、早くできるようになるためには、どうすればよいのでしょうか。

それは、「最初から新しい方策(やり方)を教えておくこと」です。

多くの仕事には良い方策があります。
若年層は、この方策を見つけ出す能力(流動性能力)が高いのです。しかし、高齢者は、過去の経験や知識を生かすこと(結晶性能力)は高くても、自分が経験したことがないことをする、新しい方策を見つけ出すこと(流動性能力)は苦手です。これが、若年層との大きな違いです。

相手が年上となると、遠慮もあり「自分で考えて…」と言いがちになります。
一見相手を尊重しているように聞こえますが、高齢者に対しては、そうとは限りません。
むしろ、最初にやり方を教え、自信を持たせるほうが相手の自尊心を大切にすることがあります。

気をつけなくてはいけないのは 「覚えが悪い」と、「覚えることができない」を混同しないことです。大きな違いです。

高齢者にとって、最大の不安は「できなくなること」です。
「できる」ということを、本人に伝えると、自分の能力の低下に対する不安が和らぎ、モチベーションの向上につながります。

トレーニングの方法として必要なのは、「反復」と「時間をかけること」です。
私たちには、「回復可能性」が潜在しています。「反復」がこの「回復可能性」を呼び起こしてくれます。70歳代になっても、訓練によって知能得点は維持されるだけではなく、向上することがわかっています。

ちょっとした工夫で、シニアの「覚えるのは遅い」を改善できることがあります。
自信をつけることが、生産性向上となることはもちろんですが、本人のやりがいを生み出します。
ぜひ、お試しください。